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「及び並びに!」というキャッチフレーズが秀逸な理由

ライティング

「及び並びに!」このキャッチフレーズに聞き覚えのある方、多いんじゃないでしょうか。

実はこのキャッチフレーズ、行政文書や法務文書に関連する仕事、あるいは行政になんらかの書類等を提出する機会の多い仕事をしている人に「おっ!」という感じで刺さる、非常に秀逸なキャッチフレーズなんです。

今回は、「及び」「並びに」を例として、行政文書等の公用文のルールについてお話していきます。

「及び」「並びに」の公用文ルール

「及び」「並びに」が、行政文書等に関連する仕事をしている人に刺さる理由。
それは、行政文書等の公用文を作成する際にはいくつもの特殊なルールが存在し、その代表例がこの「及び」「並びに」の使い方だからです。

では「及び」「並びに」の使い方が公用文ではどのように決められているのか。国の文化審議会が昨年(令和4年)の1月に建議した「公用文作成の考え方」から抜粋して紹介しましょう。

及び・並びに
 法令・公用文で、複数の物事を結び付けたり、同時に採り上げたりすることを表す場合に、「と」という意味で用いる。「及び」を用いていない文では、「並びに」は現れない。広報等では、特に「並びに」は使わないようにし、例に示すような言い換えをするなどの工夫をする。

A及びB 二つの物事を結び付けたり、同時に採り上げたりする。
 例)「委員及び臨時委員」→ 委員と臨時委員の両者
A、B、C及びD 等しく扱うべき三つ以上の物事を結び付けたり、同時に取り上げたりする。最後のつながり部分にのみ「及び」を用い、他は「、」とする。
 例)「執筆し、編集し、印刷し、及び保存する。」→ 執筆、編集、印刷、保存を全て行う。
A及びB並びにC(及びD) 三つ以上の物事を結び付けるなどの際に、結び付きの強さに段
階がある場合、1段階目の結び付きには「及び」を、2段階目の結び付きには「並びに」を使う。

 例)「鉄道の整備及び安全の確保並びに鉄道事業の発達及び改善に配慮する。」

公用文作成の考え方(建議)|文化審議会(PDFファイル)

いかがでしょう。思いのほか、使い方が厳密に指定されていると感じられるのではないでしょうか。

かみ砕いて解説すると、要は「AとB」と2つを並べて言いたい場合、行政文書等では「A及びB」と書きます。「AとBとC」と3つ以上を並べて言いたければ「A、B及びC」と書きます。…といったルールです。

…と、ここまでは分かりやすいのですが、ちょっと問題なのが「並びに」。
「三つ以上の物事を結び付けるなどの際に、結び付きの強さに段階がある場合」というのが、ややこしいですね。

「及びに」の場合は、例えば「リンゴ、ミカン及びブドウ」といった感じで、同じレベル感のものや、同じカテゴリのものを並べて使います。

一方で「並びに」を使うのは、例えば「リンゴ及びミカン並びに豚肉及び牛肉」といったような文です。

この場合、リンゴとミカンが「フルーツ」という強い結び付きで、豚肉と牛肉が「食肉」という強い結び付きで括れるので「及び」でつなげます。さらに「フルーツ」と「肉」は「食べ物」という弱い結び付きで括れるので「並びに」でつなげます。

これが、公用文における「及び」「並びに」の使い方のイメージです。

ちなみに上記「公用文作成の考え方(建議)」では「又は」と「若しくは」の使い方も明示されていますが、これも「及び」「並びに」と同様に強い結び付きで「又は」を、弱い結び付きでは「若しくは」を使います。
「リンゴ又はミカン若しくは豚肉又は牛肉」という感じですね。

上記「公用文作成の考え方(建議)」では「用語の使い方」の章のいちばん最初にこの「及び」「並びに」が記載されているほど、公用文のルールとしては非常にベーシックなものです。
だからこそ、法務的な作業を行う人に対しては「及び並びに!」というフレーズが刺さるわけです。

「及び」「並びに」を辞書で引いてみよう

ここで念のため、「及び」「並びに」が辞書ではどう定義されているのかを、明鏡国語辞典の第三版で確認してみましょう。

「及び」【接続詞】
同類のものを並べ挙げ(て一団とす)る語。並びに。
使い方:
(1)名詞(句)と名詞(句)をつなぐ。動詞や形容詞には使わない。
(2)法令では、二重の接続の際、小さいほうの接続に「及び」、大きい方の接続に「並びに」を使う。

「並びに」【接続詞】
および。

『明鏡国語辞典 第三版』より

いかがでしょうか。
「並びに」の意味は「および。」と書いてありますから、辞書においては「及び」「並びに」は実質、同じ意味であると明示されていることが分かります。

ただし、さすがは明鏡国語辞典。「及び」の「使い方」の(2)として、先にご説明したような公用文での使い方も紹介されています。

なぜ、公用文のルールは明確に指示されているのか?

今回は、「及び」「並びに」を例として、行政文書等の公用文のルールについてお話してきました。
そもそもなぜ、公用文のルールというのはこんなに明確に指示されているのでしょうか?

ひとつ大きな目的として「誰が読んでも同じ意味で捉えることができるようにするため」というのがあります。

「公用文」とは、「国・公共団体などが出す文書や、法令で用いる文章」のことを言います(明鏡国語辞典の第三版より)。これらの文書は私たち国民に対してルールを規定したり、国として行う政策・施策を明示したりするものなので、国民全員に影響のある文書だと言えます。
にも関わらず、読んだ人によって捉えた意味が違ったりすると、困りますよね。なので、公用文では言葉の意味や使い方を細かに定めることで、誤読や誤解釈を避けられるようにしているんです。

…が。

一方で、国や行政機関、あるいは行政施策等に関わる民間企業にしてみれば、「細かに定めてしまうとこちら側が困ってしまう…」というような話ももちろんあり。実は、「細かに定めているように見えるけど、実は例外も広く認めることができるような言い回し」や「具体性があるように見えてよく見ると何ら具体的ではない言い回し」というのも存在します。

それらについても今度、別の記事でお話してみましょう。

今回はここまで。ご覧いただきありがとうございました。

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