Webライティングという仕事は、老若男女問わずあらゆる世代の人々がいる「インターネット」が舞台という点が大きな特徴です。
そのような場所で何らかの目標を叶えたい文章を書く場合、絶対に押さえておきたいのが「コンテクスト」という概念です。
「コンテクスト」とは
「コンテクスト(context)」とは、「文脈」「事情」「背景」「状況」「前後関係」といった意味を持つ英単語です。
ここ数年はHR界隈で使われるのをよく目にしますが、それ以外にもさまざまな分野において専門用語として用いられており、それぞれの分野によって異なる意味合いやニュアンスを持っています。
今回の「Webライティングという仕事」という文脈からは、言語学におけるコンテクストが意味合いとしては最も当てはまります。Wikipediaでの説明が割と分かりやすかったので、ここで引用してご紹介しておきましょう。
言語学におけるコンテクストとは、メッセージ(例えば1つの文)の意味、メッセージとメッセージの関係、言語が発せられた場所や時代の社会環境、言語伝達に関連するあらゆる知覚を意味し、コミュニケーションの場で使用される言葉や表現を定義付ける背景や状況そのものを指す
コンテクスト – Wikipedia
このままだとやや難解なのでかみ砕くと、要は「言葉に対する認識や理解を形づくっている要因」と言い換えることができます。
インターネットという広い世界で、文章を「読んでもらいたい人に読んでもらい、伝えたいメッセージを過不足なく適切に伝える」ためには、この「コンテクスト」に配慮して作文をすることが重要になる。今回お伝えしたいのは、こういうお話です。
スポーツ実況における「コンテクスト」
コンテクストへの配慮が重要という話をしましたが、いきなりWebライティングの話として説明しようとすると大変なので、ここでは実はコンテクストと深い関連がある「スポーツ実況」を例として、ご説明しましょう。
例えばサッカーの試合で、以下のようなフレーズが実況で流れてきたとき。
「前線からハイプレスを仕掛けてボールを奪った!そのままサイドに流れて中へセンタリングを上げる!フォワードが胸でトラップしてシュート!」
このフレーズを耳にして(目にして)意味がわかる人は、サッカーをやったことがあるか、やったことはないけど見るのが好きな人でしょう。
そうでない人がこのフレーズを耳にしても、何を言っているかはさっぱり分からないはずです。
この「サッカーを知っている」ということが「コンテクスト」であり、それが人によって違う(知っている人と知らない人がいる)というのが「コンテクストの差」です。
サッカーの実況であれば、それを観る人は大部分が「サッカーを知っている」はずだから、それに合わせた専門用語(「ハイプレス」「サイド」「センタリング」「トラップ」など)を随所に織り交ぜた方が、たしかに端的で分かりやすいです。
でももし、サッカーを知っている人がこのワンシーンを「サッカーを知らない人」に解説しようとするなら
「選手が前の方から積極的に相手の足元にあるボールを奪いにいってボールを奪うことに成功!そのままピッチの隅っこの方に行ってからボールをゴールの前の方まで蹴り飛ばす!味方の選手が胸でボールを受け止めて、ゴールに向かって蹴った!」
という感じで、専門用語を平易な言葉に言い替えるなどして、分かるように伝えようとするでしょう。
こういった、見る人や読む人のことを想像したうえでの言葉遣いや表現方法の工夫が「コンテクストへの配慮」です。
なぜWebライティングでは「コンテクストの差への配慮」が大事なのか
なぜ、Webライティングでは「コンテクストの差への配慮」を意識することが必要なのでしょうか。
それは、人は自分の頭の中にある知識や調べた知識を言葉としてアウトプットしようとするとき、自ずと「自分」を軸として言葉遣いや表現方法を選択してしまう傾向があるからです。
しかし、Webライティングの仕事は基本的にはクライアントの代筆です。なので、まず「自分」ではなく「クライアント」を主語として言葉遣いや表現方法を選ぶ必要があります。
例えば「翻訳会社」の記事コンテンツを作る場合、導入部分で
「翻訳ってとても難しいですよね!今回は英語翻訳のポイントを調べてみました!」
と書くよりも、翻訳のプロである翻訳会社が主語ならば
「翻訳に苦戦されている方は多いです。今回は英語翻訳のポイントをご紹介します」
と書く方がより自然になります。
また、記事を書いている「自分」は「翻訳のポイントを紹介すれば読んでくれるはず!」となんとなく思いがちですが、そもそも翻訳会社を探している人は、翻訳についてある程度の知識をすでに持っている可能性もあります。
そういった人をペルソナとして設定する場合には、記事に盛り込む「英語翻訳のポイント」を、少し専門性を高めた内容にしたりするなどの工夫が必要になります。
これが、記事の執筆に際しての「コンテクストの差への配慮」です。
大事なのは「記事の目的」を見据えること
ここで誤解があったら申し訳ないので補足をしますが、ここまでのお話は「ペルソナを考慮して専門的な記事をいっぱい書けばいい」とか「企業のオウンドメディアは必ず企業自身を主語とすべき」ということではありません。
大事なことは、記事の目的をしっかりと見据えたうえで、それを考慮したコンテクストへの配慮を行う、ということです。
翻訳会社がオウンドメディアで記事を作る場合でも、ターゲットのペルソナ設定は色々なケースが考えられるはずです。翻訳会社に依頼したいけど全く翻訳業界に詳しくない人、翻訳会社への依頼経験があるけど不満があったのでより良い翻訳会社を探している人、上司に「翻訳会社を探せ」と言われたのでとりあえず情報収集をしている人、などなど。
それら様々なペルソナ設定に応じて、それぞれのペルソナに「記事を読んでどういう行動変容をしてほしいのか」を考えた上で、それぞれのコンテクストにマッチした記事内容を仕上げること。
記事の目的から読者の行動変容まで一貫してイメージすることが、Webライターに求められる重要な視点だと言えます。

